法人破産とはー制度の仕組みとできること

法人破産や個人の破産は、支払い不可能になった方が利用できる手続き。法人破産は、破産法に基づきお手続きいただけます。
(法人の破産手続開始の原因)
第十六条 債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
2 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。
引用元:破産法(法令検索e-Gov)
ここでは法人破産の仕組みと効果を解説します。現在法人破産を検討されている方は、手続きすると何ができるかご参考ください。
法人破産の仕組み
手続きの段階 | 手続きすると起こること |
|---|
破産手続開始決定 | 裁判所が会社に支払い能力がないことを認める。代表者の経営権が破産管財人に移る |
配当・換価(かんか) | 管財人が会社の財産を換金し、債権者に配当する |
清算完了 → 法人格消滅 | 全ての処理が完了し、法的に会社の存在がなくなる |
※破産管財人とは・・・裁判所が選任する弁護士のこと。裁判所の立場から破産者の財産を管理・処分し、債権者への分配が公平に行われるよう管理する。
※換価(かんか)とは・・・税金の滞納処分や相続した財産の売却、借金返済のための財産処分のこと
法人破産は、まず裁判所を通して手続きする。そして、破産管財人管理のもと財産が換金され、債権者に配当される。全ての処理が完了すると会社の存在がなくなります。
まずは弁護士に相談することから始まるので、法人破産をお考えの方は弁護士にご相談ください。法人破産は、多くの弁護士事務所が初回無料にて相談を受け付けています。
法人破産すべきか、または法人破産以外の手段があるかを相談されるのもおすすめです。
何ができる?法人破産の効果
会社の債務がなくなる
返済催促の連絡がストップする
会社の存在がなくなる
また、法人破産と個人の債務は別。代表者の連帯保証債務は法人破産しても残ります。連帯保証債務については、後ほど詳しく解説いたしますのでそちらをご覧ください。
法人破産と個人破産の違い

法人破産を調べると、個人破産の方が適しているように感じている方もいらっしゃると思います。法人破産と個人破産は以下のように全くの別物。
項目 | 個人破産 | 法人破産 |
|---|
手続きの対象 | 個人の借金 | 会社の借金 |
免責概念 | あり(別途借金免除の決定が必要) | なし(法人格消滅で自動消滅する) |
自由財産 | 99万円までの現金などは残せる | 残せる財産はない |
復権 | 約4〜6ヶ月で復権する | 法人格の復権はなし。完全消滅する |
手続きにかかる期間 | 3〜12ヶ月 | 6ヶ月〜1年(複雑な場合は2年以上) |
法律上は全くの別物
法人破産しても、基本的に個人の財産は処分されません。しかし、代表者が連帯保証している場合は別。借入やリース、オフィスの物件等、代表者が連帯保証人になっている場合は会社の代わりに支払うことになります。
メリットとデメリット|個人破産と法人破産を同時にする

中小企業の場合、借入やリースのために代表者が連帯保証人になっていることがほとんど。連帯保証人になっている場合、法人破産だけでは手続きが完結しないことがあります。
法人破産と個人破産を同時に手続きするメリットもあるので、連帯保証人になっている方会社代表の方は、同時手続きの利点を確認していきましょう。
なぜ法人破産だけでは終わらないのか
会社がなくなっても保証人としての契約は残ります。そのため、オフィスや店舗として利用している物件やコピー機などのリース。これらは、会社代表者の方が連帯保証人になって契約されていることがほとんど。
法人破産してもこういった契約は保証人として個人の契約が残るため、会社がなくなっても手続きは完結しません。
そのため、全て手続きを行うための手段として選ばれるのが個人破産。保証人としての支払いを清算するために、法人破産と同時に手続きすることがあります。
状況別|法人破産と個人破産のよくあるパターン
状況 | 手続き |
|---|
銀行融資に連帯保証あり | 法人破産と個人破産を同時に行うのが一般的 |
連帯保証なし | 法人破産のみで完結する |
経営者保証ガイドライン適用 | 法人破産と個人保証ガイドラインで、個人破産を回避する |
経営者保証ガイドラインとは、債権者全員の同意を得れば連帯保証人になっていても個人破産せずに済む仕組み。法人破産の手続き開始申立を行うと利用できます。
経営者保証ガイドラインについては、後ほど詳しく解説します。利用要件や手続きの方法は、そちらでご確認ください。
メリット|個人破産と法人破産を同時にする利点
どちらも裁判所に予納金を払うことになりますが、個人破産と法人破産を同時に行うと、個人破産の納付は官報広告費用分のみで済むことが多いです。
また、同時に手続きすることで同じ手続きで処理できる部分もあるので、手続きの負担や所要時間短縮につながるところが同時に手続きするメリットです。
デメリット|個人破産と法人破産を同時にするリスク
スケジュールがタイト
法人破産の予納金が用意できないことも
法人破産と個人破産を同時に進めることになるため、スケジュールがタイトになります。基本は弁護士が手続きしてくれますが、会社の代表者が用意する書類もあるので、事前に手続きの流れを確認してから始めるのがおすすめです。
また、法人破産の予納金は負債総額により異なります。負債が大きいほど予納金が高くなるのでご注意ください。
法人破産のメリット

法人破産は上記のようなメリットがあります。会社の債務が増え、これ以上続けても立て直しが難しい場合は、前向きに法人破産を検討するのも賢明です。
会社の借金が完全消滅する
法人破産に金額の規定はありません。借金500万円でも支払い見込みがなければ利用できますし、億単位の借金でも利用可能。ただし、債務額が大きいと手続きが複雑になるケースも。
どちらにしても会社の借金を消滅できるので、再スタートしたい方には前向きな手続きと言えるでしょう。
督促や取り立てが止まる
弁護士から債権者に送られる受任通知と法人破産の開始決定で、督促や取り立てがなくなります。電話や郵便、訪問等で返済するよう促されることがなくなるので、対応に割いていた時間を他のことに使えます。
正式に会社を廃業できる
法人破産は裁判所を通して手続きされるため、会社を正式に廃業できます。会社の登記に破産して会社を閉じたことが載るため、後から会社が存続していると扱われることがありません。
訴訟や差押えが止まる
破産開始が決定すると、全ての訴訟や差押えがストップします。ひとつひとつ対応する手間が省けるため、日常的な負担が減ります。
従業員の未払い賃金立替制度を利用できる
国が代わりに支払ってくれる未払い賃金立替制度を利用すれば、従業員に最低限の賃金を払うことができます。一時的ではありますが、そのままでは支払うことができなかった賃金を渡せるので、従業員の負担を減らせます。
経営者の心理的負担が減る
意外と見落としがちなのが心理的負担。払えるはずがないのに督促が届いたり、取引先や従業員にうまいこと説明するのは精神的にキツイものがあります。何をするにも付きまとう精神的負担を減らすことで、メンタルの健康にもつながります。
経営者保証ガイドライン適用なら個人破産を回避できる
会社の代表が法人で契約しているリースや賃貸物件の連帯保証人になっていた場合、個人破産しなければいけなくなることがあります。しかし、利用条件を満たしていれば経営者保証ガイドラインを活用でき、信用情報を傷つけずにお手続きいただけます。
本来なら個人破産によりクレカやローンに利用制限がかかりますが、経営者保証ガイドラインを活用すれば個人契約のクレカや住宅ローンもそのまま利用できます。
法人破産のデメリット

取引先や顧客への影響
従業員の解雇
会社代表者の信用情報に影響する
官報に法人破産したことが掲載される
新会社設立に制約がある
過去の経営判断が問われる
予定外に費用が嵩むことも
賃貸物件の処理が大変
法人破産はこのようなデメリットがあります。メリットだけでなくリスクも理解したうえで手続きすべきかご判断ください。
取引先や顧客への影響
売掛金・買掛金・契約が停止するため、取引先に損失が出ることになります。また、定期的に来てくれる顧客などがいる場合も同じ。法人破産で会社がなくなるとことで影響が出ます。
ただし、仕入れ先に迷惑をかけたくないから、と仕入れた商品の代金を優先して支払うと偏頗弁済(へんぱべんさい)にみなされることがあります。万が一偏頗弁済とされると、法人破産が否認される可能性もあるため、一部を優先して返済・完済しないようご注意ください。
従業員の解雇
法人破産は原則全員解雇になります。解雇は30日以上前に予告するのが法律で定められており、30日前に予告できない場合、解雇予告手当として1ヶ月分以上の平均賃金を支払わなければいけません。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
引用元:労働基準法(法令検索e-Gov)
法人破産するほど経営が困難な企業は、従業員の給与支払いを滞納していることも多いでしょう。その場合、未払賃金立替制度を活用して従業員の給与を確保することができます。
1 要件
(1)事業主に係る要件
① 労災保険の適用事業の事業主、かつ、1年以上事業を実施
② 倒産したこと
ア 法律上の倒産
破産手続開始の決定(破産法)、特別清算手続開始の命令(会社法)、
再生手続開始の決定(民事再生法)、更生手続開始の決定(会社更生法)
イ 事実上の倒産(中小企業事業主のみ)
事業活動停止、再開見込みなし、賃金支払能力なし(労働基準監督署長の認定)
※ 中小企業事業主とは、以下のいずれかに該当する事業主をいう
・資本金の額等が3億円以下又は労働者数が 300 人以下で、以下の業種以外の業種
・資本金の額等が1億円以下又は労働者数が 100 人以下の卸売業
・資本金の額等が5千万円以下又は労働者数が 100 人以下のサービス業
・資本金の額等が5千万円以下又は労働者数が 50 人以下の小売業
引用元:厚生労働省
法人破産で職を失うのは従業員も同じです。破産する際は、従業員の給与にも配慮したうえで手続きしましょう。
会社代表者の信用情報に影響する
法人破産すると、法人で契約しているリースや物件の保証人になっている代表者の個人破産が必要になり、信用情報が事故登録されます。信用情報が事故登録されると5〜7年クレジットカードやローンを利用できなくなります。
ただし、利用条件を満たせば経営者保証ガイドラインを活用し、個人破産せずに手続きすることができます。
官報に法人破産したことが掲載される
国が発行する唯一の機関紙、官報に法人破産したことが載ります。官報に載るのは計2回。
官報は誰でも閲覧可能ですが、一般の方が見ることはあまりありません。私生活の影響は少ないので、そこまで気にする必要はないでしょう。
ただし、会社代表者として個人の氏名も官報に載ります。新しく会社を作る際、取引先や金融機関の融資に影響する可能性があります。
新会社設立に制約がある
法人破産をする前に、価値のある財産や事業を新会社に移す 「第二会社方式」を利用した場合、法人破産が否認されることがあります。手続きしてからでは取り返しがつかないことになりかねないので、新会社の設立と併せ、弁護士に相談されるのがおすすめです。
過去の経営判断が問われる
法人破産は申立したからと言って必ず可決するものではありません。過去の判断を指摘される可能性もあるため、申立1〜2年前の取引にはご注意ください。
予定外に費用が嵩むことも
法人破産は債務額によって裁判所に納める予納金が異なります。通常管財事件で60万円以上。債務額が1億円なら80万円。3億以上で100万円かかることも。
早期手続きで予納金を抑えられるので、債務額が少ないうちに法人破産されるのが良いでしょう。
賃貸物件の処理が大変
オフィスとして借りていた物件や、店舗として利用していた賃貸物件は、原状回復して撤退する必要があります。申立前に管財人と相談することになりますが、原状回復にもお金がかかるのでご注意ください。
利用条件|法人破産を利用できる人と手続きが向いていない人

法人破産は、支払い能力がなくなった会社が利用できる債務整理です。
ここでは、会社がどのような状況になっていると法人破産が良いのか。または、法人破産が向いていないのはどういったケースかを解説します。
法人破産の利用条件
状況 | 内容 |
|---|
支払いできない | 返済・支払いしなければいけない債務を継続的に支払えない状態 |
債務超過 | 負債総額が資産総額を上回る状態 |
法人破産を行うには、支払いできないだけでなく債務超過と認められる必要があります。負債総額と資産総額のバランスは、会社のバランスシート(貸借対照表)を使って確認します。
法人破産が向いているケース
法人破産に向いているケースは、3ヶ月以内に資金繰りが破綻することがわかっている状態。または、今後新しい仕事が入ってくる予定がなく、収益が見込めない時です。
一時的に収益が見込めなくても金融機関からの融資が受けられればなんとか持ち堪えることができますが、追加融資がなくなる時も法人破産が向いているでしょう。
法人破産が向いているかの確認項目として、収益の他、税金の支払いにも注目です。法人税や法人住民税、法人事業税の支払いが発生します。しかし、法人が税金を滞納すると延滞税が追加され、本来支払う予定の税金よりも支払い額が膨らみます。
また、社会保険料の支払いにも注意。会社代表者や従業員の社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険)は、会社と役員・従業員が折半で支払う仕組みですが、会社が社会保険料を滞納すると最終的に会社の預金や売掛金が差し押さえられます。
税金の延滞税や社会保険料の延滞料が発生しているだけでなく、差押えの恐れもある場合は法人破産を検討するひとつの指標になります。
法人破産が向いていない人
以下の状況にお悩みの方は法人破産以外の手続きが向いている可能性があります。
状況 | 検討すべき手続き |
|---|
会社の事業に収益が残っている | 民事再生 |
大企業で社会的影響が大きい | 会社更生 |
親会社があり、グループ会社内で清算したい | 特別清算 |
経営が厳しいが借金は少ない | 任意整理 |
一時的に資金が足りない | スケジュールを引き直す |
それぞれの手続きでできることは以下をご覧ください。
民事再生:中小企業が利用できる。会社の債務を減らし、経営陣を変えずに再スタートできる手続き。個人再生の法人版。
会社更生:株式会社が利用できる。会社の借金を減らすことはできるが、経営陣は全員辞めなければいけない。お金を貸した人が返済しなかった際に活用される担保権はそのまま残る。(民事再生は担保権もなくなる)
特別清算:株式会社が利用できる。債権者の同意を得て行われる。裁判所を通して進める清算手続き。
経営が苦しい時、法人破産を選択するも良いですが、法人破産すると会社そのものが無くなってしまいます。会社を消滅させずに悩みを解決できることもあるので、手続きに迷った時は弁護士に相談されるのがおすすめです。
経営者の個人保証問題ー連帯保証は別問題

法人破産で最も懸念されるのが個人保証。会社だけでなく、連帯保証人となっている個人(会社代表)の今後にも関わる点なので、法人破産をお考えで会社代表者の方は、個人保証でどのような影響があるかをご確認ください。
会社代表者が連帯保証人になっている
中小企業向けの銀行融資は、会社代表者が連帯保証人になって契約されることがほとんど。そのため、法人破産すると連帯保証人である会社代表者に一括請求がいきます。
法人債務の保証は以下2種に分けられます。
保証種別 | 性質 |
|---|
単純保証 | 会社(主債務者)に請求してから保証人に請求される |
連帯保証 | 会社と同じ責任がある。そのため、最初から連帯保証人に請求できる |
連帯保証はこのように会社と同じだけの責任があるため、一括請求が行われます。
同時申立と経営者保証ガイドライン
連帯保証の金額が大きいと一括で支払えないことがあります。そんな時に検討されるのが個人破産。法人破産と同時に手続きすることで手間を省きスムーズに債務整理を終えられます。
連帯保証総額 | 経営者の対応 |
|---|
数百万程度 | 個人で交渉する または 任意整理で対応する |
1,000万円〜1億円 | 個人破産する |
1億円以上 | 個人破産+大型管財事件 |
大型管財事件は債権者が500人以上の場合に適用。個人破産(自己破産)だけでは足りない場合に活用されることがあります。
従来の法人破産はこのように個人破産とセットで手続きされることも多かったですが、2014年に開始された経営者保証ガイドラインの登場で法人はさんの負担を軽減できるようになりました。
経営者保証ガイドラインの詳細は、この後詳しくご説明します。個人破産せず、法人破産のみで手続きされたい方は次の章もご確認ください。
経営者保証ガイドラインとは?社長の個人保証を外せる可能性がある制度

経営保証ガイドラインを活用できれば個人破産(自己破産)せずに手続きできます。個人破産すると5〜7年クレカやローンを利用できなくなるなどのデメリットもあるため、経営者保証ガイドラインを利用できる場合は活用されるのがおすすめです。
経営者保証ガイドラインとは?
経営者保証には経営者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、早期の事業再生等を阻害する要因となっているなど、保証契約時・履行時等において様々な課題が存在します。 これらの課題を解消し中小企業の活力を引き出すため、中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして本ガイドラインが策定されました。
引用元:中小企業庁
経営者保証ガイドラインは、事業展開活性化や、中小企業が早期再生できるように、という思いのもと中小企業庁・金融庁・全国銀行協会が定めた制度。経営者以外の第三者であっても連帯保証人の方は制度を活用できることがあります。
適用要件|ガイドラインを使うには
経営者保証ガイドラインを利用するには、以下要件を満たしている必要があります。
ガイドラインに基づく保証債務整理を申し出る場合は、以下のような要件を充足している必要があります。
・法人(主債務者)が法的整理(破産、民事再生等)や私的整理及びこれに準じる手続(準則型私的整理手続)を開始申立済みであること
・対象債権者に経済合理性が期待できること
・法人(主債務者)及び保証人が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、財産状況等について適時適切に開示していること
引用元:中小企業庁
法人破産の開始を申立ており、財産状況を説明できるように準備されていることが要件です。利用要件の詳細は以下をご確認ください。
法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている
法人の取引先・債権者の主な金融機関がガイドラインを利用することに同意している
手続き後、早期事業再生着手・清算着手が認められる
経営者に不正・虚偽がない
保証履修可能額(経営者の弁済能力)を誠実に提示する
経済的なことを考えても債権者が合意している
ガイドラインを活用されたい場合、取引している金融機関や中小企業活性化協議会。または地域経済活性化支援機構(REVIC)や弁護士・税理士にご相談ください。
ガイドラインのメリット
ガイドラインを利用する1番のメリットは、個人破産(自己破産)せずに済む可能性が高いことでしょう。自己破産すると一定以外の財産は手放すことになりますが、ガイドライン利用時は残せる財産が増えます。
多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
引用元:中小企業庁
自己破産しても残せる財産を自由財産と言いますが、ガイドラインを活用すると、自己破産のインセンティブ資産を残せます。残せる財産は以下をご参照ください。
種類 | 内容 |
|---|
自由財産 | |
インセンティブ資産 | 一定期間の生計費に相当する額の資産(一定期間×月額33万円)※ 華美でない自宅(「華美」であるか否かは、個別の事案ごとに様々な要素をもとに判断) その他の資産(破産手続における自由財産の考え方や、その他の個別事情を考慮 して判断)
|
※雇用保険の給付期間を参考に、保証人の個別事情等を勘案して検討
引用元:中小企業庁

このように自由財産以外に自宅や生活費を残せるところがガイドラインを利用するメリットです。ガイドラインを利用した場合と利用しなかった際の違いを比較すると以下のようになります。
通常の経営者個人破産 | ガイドライン適用 |
|---|
5〜7年クレカやローンを利用できない | 利用停止期間なし |
自由財産(99万円+各20万円) | より多くの財産を残せる(華美でない自宅や最低限の生活費数ヶ月分) |
官報に名前が載る | 掲載なし |
一部職業の方は資格制限あり | 資格制限なし |
一括弁済 | 私的清算で柔軟に分割できる |
残せる財産が多いだけでなく、クレジットカードやローンへの影響もあります。多方面でメリットがあるため、利用できる方はガイドラインを活用されてはいかがでしょうか。
経営者保証ガイドラインを利用できなかった場合
経営者保証ガイドラインはメリットも多いですが、実際の適用率は20〜47%程度。希望したからと言って必ず利用できるものではありません。
ガイドラインを利用できない場合は自己破産が必要です。法人の連帯保証額は金額が大きいことが多いので、ほとんどの場合自己破産が通り、債務が免責されるでしょう。
費用の目安|法人破産にかかる金額

法人破産は個人破産より費用がかかります。会社の規模や債権者の数、財産によって費用が変わるので、手続きしたい会社の状況に合わせて費用相場をご確認ください。
弁護士費用+裁判所予納金
項目 | 小規模法人(売上数千万) | 中規模法人(売上1〜数億) | 大規模法人(売上10億以上) |
|---|
弁護士費用 | 50〜100万円 | 100〜300万円 | 300万円〜 |
裁判所予納金 | 約70万円〜 | 200〜500万円 | 500〜700万円 |
費用目安(合計) | 120〜170万円 | 300〜800万円 | 800万円〜数千万円 |
会社が大きい方が整理する債務が増えるため、法人破産にかかる費用が高くなります。
法人破産の費用を用意できない時
弁護士事務所の分割払い
会社の残余資産を法人破産の費用に充てる
自然消滅・休眠会社化する
特別清算する
租税公課滞納処分の延期で時間を稼ぐ
弁護士事務所の分割払いを社長個人の財布から支払うのもひとつ。経営者ガイドラインを適用できなかった場合、法人破産と個人破産の費用を合わせて分割払いにすることもできます。
法人破産すると残余資産を残すことはできません。そのため、残余資産がある会社は法人破産の費用に充てるのが一般的です。
自然消滅や休眠会社化するのも可能ですが、後々トラブルに発展することも。あまり賢明な手段ではないため、基本的には他の方法で対応された方が良いでしょう。また、手続きしたい会社が株式会社なら特別清算で債務整理するのも代替え策です。
その他、税金や公共料金の支払いが滞った時に行政が強制的に差押えする租税公課滞納処分を延期するのもひとつですが、これでは一時凌ぎにしかなりません。最終的には問題解決につながらないため、費用に困ったら弁護士の無料相談を活用されるのがおすすめです。
早期申立で費用を抑えられる
法人破産の費用は会社の規模と債権者の数で変わります。そのため、事業を縮小する前に手続きした方が結果として費用を抑えることができます。
申立のタイミング | 結果 |
|---|
事業継続中(資金がまだ少しある) | 少額管財扱い。予納金70万円ほどで法人破産できる |
資金が枯渇する寸前 | 通常管財。予納金200万円〜 |
完全に枯渇した後 | 予納金が払えない。法人破産だけでなく自己破産が必要になることも |
債務整理について、詳しくは「債務整理の費用はいくら?制度別の相場と払えないときの対処法」をご覧ください。
法人破産|手続きの流れと期間

破産手続の流れと、法人破産を始めてから会社が抹消されるまでの全体的な期間をご説明します。法人破産は手続きを開始してすぐに終えられるものではありません。
先が見えていると精神的負担も減らすことができるはずなので、ぜひ手続の流れや必要な時間を確認しておきましょう。
全体的な手続きの流れ
ステップ | 内容 | 必要な期間や回数 |
|---|
①:弁護士に相談する | 会社の経営状況や債務を提出。法人破産が良いか、他の手続きが良いかを相談する | 1〜2回 |
②:Xデーを設定する | 事業を停止し、弁護士が債権者に受任通知を送付する日を決める | ー |
③:受任通知を発送する | 全債権者・取引先に弁護士が受任通知を送付。送付とともに督促がストップする | 当日 |
④:従業員に解雇通知する | 解雇予告手当の支払い または 即時解雇 | Xデー前後 |
⑤:在庫・備品やデスクの処分 | 備品やデスク等は売却 または 廃棄。賃貸物件の引き渡し準備を行う | 1〜2週間 |
⑥:申立書類の作成 | 財産目録・債権者一覧表・取引履歴を用意する | 1〜2ヶ月 |
⑦:申立 → 裁判官面接 | 同時廃止・少額管財・通常管財を振り分けられる | 申立から1週間程度 |
⑧:開始決定 | 裁判所により破産管財人(弁護士)が選任され、代表者の経営権が管財人に変わる | 申立から数日〜2週間 |
⑨:管財人面接 | 管財人が会社の状況を確認。財産を調査する。 | 開始決定から1〜2週間 |
⑩:第1回債権者集会 | 管財人が業務報告し、会社の代表や希望する債権者と質疑応答する | 開始決定から3〜4ヶ月後 |
⑪:換価・配当 | 管財人が財産を売却し、債権者に配当する | 集会から数ヶ月〜1年 |
⑫:任務終了の集会・廃止決定 | 財産調査や配当が完了し、管財業務終了へ。法人格が消滅する。 | 1〜2回 |
⑬:破産手続き完了 | 商業登記簿から会社が抹消される | 廃止決定から数日 |
法人破産により事業を停止する際、Xデーを決めます。取引先や従業員、税務署や銀行、賃貸物件のオーナーに影響が出るため、Xデーは慎重に決めなければいけません。
通常は金曜日の終業後をXデーとし、月曜日以降に受任通知を発送することが多いです。週末を活用し、事務所や店舗の整理を進めていきます。

同時破産・少額管財・通常管財。3つのパターンに分けられる法人破産。
同時廃止とは、裁判所を通し破産申立と同時に破産手続きを行う方法。法律上は法人破産も同時廃止を利用できますが、債務処理が複雑なことが多いため、個人破産の時に活用される手法です。
法人破産の場合、管財事件で手続きされることがほとんど。管財事件は、少額管財と通常管財の2パターンに分けられます。大規模な不動産の売却や債権者が多い場合は通常管財。シンプルな場合は少額管財に振り分けられます。
少額管財の方が費用を抑えて法人破産できますが、ご自身で選ぶことはできません。裁判所の判断で決定されます。
また、破産開始が決定されると選ばれる破産管財人。破産管財人は裁判所が選任した弁護士のことです。ご自身が依頼された弁護士や、あなた自身が破産管財人を選ぶことはできません。
管財人が選任されると会社の状況を確認するため面接が行われます。その後「第1回債権者集会」が開かれます。債権者集会に参加するのは以下の方々です。
会社の代表者(社長など)
破産管財人
裁判官
裁判所書記官
債権者
債権者は希望する場合のみ出席。債権者が必ず出席するわけではありません。
債権者集会は通常1回ですが、場合によっては2回・3回開かれることもあります。法律で回数制限が決まっているわけではないので、状況に合わせて集会が行われます。
法人破産全体にかかる時間
法人破産は会社の規模や債権者の数により手続きにかかる時間が異なります。
小規模法人(少額管財):6〜10ヶ月
中規模法人(通常管財):1〜2年
大規模法人:2年〜
小規模法人・中規模法人でも、債務が複雑な場合は平均より時間がかかることがあります。
従業員への対応|法人破産するにあたり行う解雇と未払い賃金の支払い

法人破産を検討する会社経営者にとって避けて通れないのが従業員への対応。解雇の告知義務や、告知が遅れた際の対応、給与未払いがある時の対処法についてもご紹介します。
解雇予告と解雇予告手当
解雇を行うときには、解雇しようとする従業員に対し、30日前までに解雇の予告をする必要があ ります。解雇予告は口頭でも有効ですが、口約束では後々にトラブルの原因となりますので、解雇 する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成することが望ましいでしょう。
引用元:厚生労働省
法律上、従業員の解雇は30日前までに伝えなければいけません。これを解雇予告と言います。
しかし、状況によっては30日前までに解雇を伝えられないこともあるでしょう。その場合は解雇予告手当という費用を払わなければいけません。解雇予告手当は以下のように計算されます。
※歴日数とは・・・営業日に関係なく、土日祝含めて数えた日数のこと。
上記のうち、どちらか高い方の額を支払う必要があります。また、解雇予告せず即日解雇する場合、解雇と同時に解雇予告手当を支払うことに。告知が直前になればなるほど法人の負担は大きくなります。
未払賃金立替制度
未払賃金立替制度とは、倒産により給与や手当を払えなくなった会社の代わりに、本来支払われるはずだった額の一部を国が立替える制度。労災保険が適用される事業で1年以上事業を実施している会社が利用でき、正社員はもちろん、パートやアルバイトも対象です。
未払賃金の限度額は退職日の年齢により異なり、立替られるのは限度額の8割です。
退職日の年齢 | 未払賃金の限度額 | 立替払いの上限額 |
|---|
45歳以上 | 370万円 | 296万円(370万円×0.8) |
30歳〜45歳まで | 220万円 | 176万円(220万円×0.8) |
30歳未満 | 110万円 | 88万円(110万円×0.8) |
立替対象は退職日6ヶ月前から立替払いが請求されるまでに支払いが遅れている給与と退職金。ボーナスは立替対象外です。
未払賃金立替制度は毎年多くの会社が活用しています。
年度 | 利用した企業数 | 支給者数 | 総額 |
|---|
令和6年 | 2,623件 | 30,591人 | 110億46百万円 |
令和5年 | 2,132件 | 24,300人 | 86億21百万円 |
令和4年 | 1,285件 | 14,203人 | 48億56百万円 |
引用元:厚生労働省
令和4年〜令和6年にかけて、利用した企業、金額ともに上昇しています。法人破産すれば解決する。というわけではありませんが、破産手続きにより従業員の方を守れる場合もあります。
従業員への伝え方
従業員にとって、生活するうえで必要不可欠なものです。突然解雇を伝えるのではなく、会社の状況に合わせ余裕をもって従業員に予告しましょう。また、従業員を解雇する際、以下の書類や案内も合わせてご準備ください。
離職票の発行
源泉徴収や退職証明書の発行
健康保険資格喪失証明書
未払賃金立替制度の案内
離職票は失業給付の申請に。源泉徴収や退職証明書は、次の職場が決まった時に必要になります。また、健康保険資格喪失証明書は転職後の企業に提出したり、場合によっては国民健康保険への切り替えの際利用します。
従業員に破産を伝えるのは心苦しいと思いますが、従業員の将来を考えれば早い段階で伝えた方が親切です。破産を告知することで従業員と衝突することもあるかもしれませんが、従業員のためにもできることをしっかり進めていきましょう。
賃貸物件やリース、在庫処分に対応して法人破産を進める

書類の用意や従業員への配慮の他、オフィスや店舗として利用していた賃貸物件やリースの処分も発生します。順序よく進めないと対応に時間がかかるため、破産手続きを始める前にどのような対応が必要か確認しておきましょう。
賃貸物件の退去
ステップ | 対応 |
|---|
①:物件オーナーに連絡 | 破産予定を伝え、明け渡し時期を決める |
②:明け渡し | 物を撤去し、原状回復する |
③:敷金・保証金の返還請求 | 管財人を通して回収する |
④:滞納している家賃を処理する | 破産開始決定後の家賃は「財団債権」、それ以前は「破産債権」 |
オフィスや店舗、倉庫として賃貸物件を利用している場合、法人破産を決めたら物件オーナーにご報告ください。明け渡し時期を相談し、不動産のスケジュールにも配慮したうえで破産手続きを進めます。
明け渡しの時期が決まったら、撤去が始まります。オフィスならデスクやコピー機。店舗ならキッチン周りや客席の机などを撤去し、原状回復します。
原状回復はクロスの張り替えや床の補修などが含まれます。テナント物件の場合、修繕を依頼する業者は指定されていることがほとんど。施工業者や、原状回復の範囲については契約書に記載されているはずなので、契約書をご確認ください。
また、賃貸物件の家賃を滞納している場合、破産手続き後の家賃は優先して返済される「財団債権」になります。破産管財人が財産を処理している間、賃貸オーナーは家賃収入がなくなります。そのため、破産開始が決定した後は家賃の扱いが変わります。
リース品の解約
コピー機やパソコン、社用車。冷蔵庫や製氷機をリースで利用されている場合は、解約手続きが必要です。申立前なら契約者が申請。申立後なら管財人が解約処理を行います。
リース料が残っている場合は破産債務として処理され、法人破産すれば消滅します。
ただし、会社代表者がリース契約の連帯保証人になっている場合は注意。残りのリース料は個人の債務として残るので、解約前に確認が必要です。
在庫・デスク等の処分
在庫やデスク、パソコンなどは以下のように処理されます。
価値 | 対応 |
|---|
高額な在庫(設備・機械) | 管財人が競売 または 売却する。債権者の配当に充てられる |
中古のデスクやパソコン | 中古品買取業者に一括売却。わずかな金額になる |
廃棄費用がかかるもの | 産業廃棄物処理業者に依頼 |
産業廃棄物処理業者に依頼する費用は、財団が負担します。破産する会社が支払う必要はないのでご安心ください。
また、手続き前に個人間で勝手に取引するのは禁止。「会社をたたむから」とお知り合いにパソコンをあげたり、設備を譲渡することはできません。個人で取引されたことがわかると法人破産否認につながるため、勝手に行動しないようご注意ください。
法人破産のために取引先・売掛金・買掛金を整理する

経営している会社を廃業するとなると、今後もらうはずの売掛金や、支払いが終わっていない買掛金。さらには取引先との関係を整理しなければいけません。
売掛金|会社が受け取る予定の代金
法人破産すると、売掛金は破産管財人が債権者に配当します。
未請求のものは通常通り請求。長期支払われていない売掛金は別途訴訟や支払い督促を送付して回収します。取引先がすでに破産していたり、取引先に財産がない場合。または回収費用の方が高くつく等の場合は、回収不能として管財人が回収を放棄することもあります。
買掛金|会社が払うべき代金
会社が取引先に支払うはずだった買掛金。法人破産すると、買掛金はすべて破産債権として扱われます。買掛金として処理される項目は例えば以下です。
商品を仕入れた代金
原材料の購入代金
外注先への業務委託費
印刷会社の印刷代
運送会社の配送料
広告掲載料
破産手続前に発生した買掛金は破産債権。破産開始決定後に発生した買掛金は財団債権として処理されます。支払い会社が取引先に支払うことはできないので、これらは全て破産管財人が換価したお金から支払われます。
取引先への影響
長年付き合いのある取引先には、事前に破産を伝える経営者もいらっしゃいます。ただし、ギリギリまで会社を経営することを考えると、告知するタイミングに迷う方は多いでしょう。
また、取引先が小規模なほど破産のリスクは大きくなります。取引先が倒産することで資金繰りが苦しくなる。すると、取引先の小規模な企業も破産してしまうケースがあります。これを「連鎖倒産」と言いますが、連鎖倒産は最悪のケースです。
一般の取引先は売掛金を全額回収できることは稀。一部だけ回収できる、または全く回収できないこともあり、配当率は0〜10%程度に留まります。
偏頗弁済の禁止
特定の取引先に優先的に返済・支払いすることを偏頗弁済(へんぱべんさい)と言いますが、偏頗弁済は法人破産で禁止されています。故意に支払っていない場合も法人破産否認につながる可能性もあるため、一部の取引先だけ返済しないようご注意ください。
法人破産のNG行為

法人破産を検討している会社がやってはいけない、NG行為は以下です。
特定の取引先だけに返済する
財産を隠す / 安く売る
会社の帳簿や資料を処分する
新たに借り入れる
一部の債権者だけに財産を渡す
勝手に会社の財産を処分する
特定の取引先に返済したり、一部の債権者だけに財産を渡すのがなぜNGなのか。それは、破産法に反するからです。
(目的)
第一条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
引用元:破産法(法令検索e-Gov)
法人破産は破産法に基づきルールが定められています。一部の借入や支払いを優先すると平等ではなくなってしまうため、最悪の場合法人破産を利用できなくなることも。破産手続きが不利になるため、特定の取引先を贔屓しないようご注意ください。
その他、財産を隠したり、帳簿や財産を勝手に処分するのもNG。必ず、破産管財人の指示に従って行動してください。
また、経営が苦しいからと新たに借入するのもやめましょう。債務が増え、手続きは複雑化し、法人破産の費用が増える可能性もあります。費用を抑えて法人破産するには、借金は増やさない方が手続きがスムーズです。
税金と保険料|法人破産するとどうなるのか

法人であれ、税金と保険料の支払いはなくなりません。では、破産する場合どのように手続きされるのか。税金と保険料についても確認していきましょう。
税金の扱い
法人税・消費税・地方税の滞納分
開始決定後に発生した税金
源泉徴収した所得税の未納分
代表者個人の責任
会社が支払っていなかった法人税・消費税・地方税の滞納分や破産開始が決定してから発生した税金、または従業員と半々で支払う所得税の未納分は、一般的な税金より優先して支払われます。会社に財産が残っている場合は取引先への支払いより先に税金の支払いに充てられます。
社会保険料
会社が滞納していた社会保険料は、取引先への返済より優先して支払われます。
厚生年金・健康保険の滞納分
破産手続開始後の保険料
労働保険料(労災・雇用保険)
これらの社会保険料は、従業員の年金や医療保険、失業給付に活用されるお金です。そのため、税金と同じように優先して支払われます。
要注意のケース
原則として会社の未払を社長が請求されることはありません。ただし、会社の財産を社長に移したり、故意に税金の徴収を逃れるような行為が見られた場合は個人に請求されるので、会社代表者の方は間違った行動を取らないよう注意しましょう。
法人破産の影響|信用情報と再スタート

法人破産すると、経営者にどのような影響があるか。また、破産手続きをした後どのように再スタートできるか気になる方も多いと思います。そこで、破産の影響と再スタートについて解説します。
法人の信用情報
法人破産すると会社がなくなるため、将来的な影響は特にありません。ただし、法人破産公告と配当公告で計2回官報に掲載されます。官報には会社の名称や住所や、代表者の氏名が載ります。
また、帝国データバンクや東京商工リサーチなど、企業信用情報機関への登録も。倒産情報は10年程度残ります。
経営者個人の信用情報
オフィスや店舗で利用するリース品の契約や会社の融資のために、社長が連帯保証人になっており、経営者保証ガイドラインの適用外だった場合、社長個人が自己破産することに。
自己破産するとクレカやローンの利用に影響する信用情報が事故登録され、一定期間特定のサービスを利用できなくなります。自己破産すると事故登録される信用情報は以下。
その間、個人のクレカやローンは利用できなくなります。会社がなくなるだけでなく、生活にも影響することに。信用情報に事故登録されている期間は、既存のクレジットカードはもちろん、新規クレジットカードも利用できません。
また、住宅ローンも処分され、お住まいの自宅も手放すことになります。法人破産と併せて自己破産する場合は、「自己破産」にて詳しくご確認ください。
経営者保証ガイドライン適用時
利用条件を満たしていれば、会社代表者が自己破産せずに済む経営者保証ガイドラインを活用できます。経営者ガイドラインを利用するメリットは以下です。
信用情報に事故登録されない
社長が自宅を手放さなくて済む
再起する際のハードルが低くなる
自己破産すると、一定期間クレカやローンが利用できなくなるだけでなく、原則自宅も手放さなければいけません。ガイドラインを活用でき、自宅が華美でないと判断されれば家に住み続けられますし、その後新たな会社を設立する際のハードルも下がります。
一度自己破産していると、事業に必要な融資が受けにくくなり、法人破産前に取引のあった取引先や金融機関からの信用を得るのが難しくなります。自己破産せずに新会社を作れば融資の心配も軽減できます。
法人破産しても新会社を設立できる
法律上、法人破産しても新しい会社を設立することはできます。ただし、以下にご注意ください。
旧会社の財産を勝手に新しい会社に移さない
旧会社の設備や在庫を適切な価格で取引する
新しい会社と旧会社の資金を混ぜない
破産管財人に嘘をつかない
法人破産した会社の資金を新しい会社に移すのはNG。そのつもりがなくても、疑わしい行為を行うと、破産管財人の調査対象になったり会社の代表個人が責任を問われる可能性があります。
後に面倒ごとにならないよう、新しい会社を設立する際は、弁護士に相談のうえ手続きされるのがおすすめです。
法人破産と他破産制度の違い

会社の債務整理は4種類。会社経営者の方は、どの債務整理が適切か吟味したうえでお手続きください。
比較項目 | 法人破産 | 民事再生 | 会社更生 | 特別清算 |
|---|
目的 | 清算 | 会社再建 | 会社再建 | 清算 |
法的根拠 | 破産法 | 民事再生法 | 会社更生法 | 会社法 |
対象 | 全法人 | 全法人 | 株式会社のみ | 株式会社のみ |
経営権 | 管財人に移る | 経営者継続可能 | 更生管財人に移る | 清算人(会社の元役員や弁護士) |
合意 | 不要 | 債権者の決議 | 債権者・株主の決議 | 株主総会の特別決議 |
期間 | 6ヶ月〜2年 | 6ヶ月〜1年 | 1〜3年 | 6ヶ月〜1年 |
費用 | 120万〜300万円 | 数百万円〜1,000万円 | 数千万円 | 100万〜300万円 |
適している会社 | 再建不可・小規模〜中規模 | 事業自体は収益の見込みがある中規模企業 | 大企業・上場企業 | グループ内で清算できる会社 |
あなたの会社にあった手続きは?
状況 | おすすめ |
|---|
事業の再建が見込めない、会社の規模も小さい | 法人破産 |
事業としては収益の見込みがある、会社を再建したい | 民事再生 |
大企業で社会的影響が大きい、会社を再建したい | 会社更生 |
親会社のグループ内で清算したい | 特別清算 |
身動きができなくなった会社は法人破産が良いですが、会社を再建したい場合、民事再生や会社更生が適している場合も。詳しくは弁護士にご相談のうえご選択ください。
法人破産のよくある失敗例と対処

法人破産を行なっても、途中不備があると本来の手続きより時間がかかることも。よりスムーズに破産手続きを進められるよう、法人破産のよくある失敗例と対処法をご紹介します。
①:弁護士への相談が遅すぎる
「後少し頑張れそう」と無理やり経営を続けると、債務が増え、資金が枯渇します。債権者が多い方が裁判所に支払う予納金は高くなりますし、最悪の場合予納金が支払えないケースも。
費用面でも手続きを後回しにせず、一度弁護士に相談するのが安全でしょう。
対処法:3ヶ月先の資金繰りが怪しくなったらすぐに相談。早いうちに法人破産すれば、少額管財で費用を抑えてお手続きいただけます。
②:親戚・知人への返済を優先する
親や親戚、ご友人から借りたお金を先に返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれる禁止行為です。一部の債権者だけ優先的に返済した場合、破産管財人によりお金を戻され、経営者が責任に問われる場合も。
知らずに行なった場合も後が面倒になりますし、手続きに要する時間も長くなってしまうのでご注意ください。
対処法:弁護士が債権者に受任通知を送った後は誰にも返済しないようにしましょう。家族や親族、ご友人も同様です。
③:会社の財産を経営者個人の口座に移す
法人破産直前に車やパソコン、不動産等を個人名義に移すのはNG。過去2年は財産調査対象となり、場合によって破産管財人により取り消し請求されることがあります。
対処法:破産申立直前の名義変更は厳禁。会社の資産全てを正直に申告してください。
④:手続き前に破産することを取引先に伝えた
早い段階で取引先に破産を告知すると、先に支払いを止められたり商品を回収される可能性があります。事前に伝えることは問題ありませんが、告知のタイミングにはご注意ください。
対処法:破産前に告知する相手は、本当に信頼できる取引先だけに留めてください。伝えていない取引先にまで話が広まることもあるため、周囲に話してしまいような方には伝えずにいるのが安全です。
⑤:従業員への対応を雑に行う
法人破産は会社が消滅するだけではありません。従業員の生活にも影響するため、破産前後の従業員への対応は丁寧にしましょう。解雇通知や書類の用意、未払賃金の説明など、従業員に必要なことはしっかり行なってください。
対処法:破産開始30日前までに通知し、従業員が転職活動できるよう配慮しましょう。また、給与未払等ある場合立替制度の案内も必要です。細かい手続きも発生するため、破産に伴う従業員のサポートは社労士に依頼するのが安全です。
⑥:税金の対応を後回しにした
源泉徴収など、個人の責任になる税金の支払いを行なっていない場合、法人破産後に経営者個人が請求されることがあります。後回しにすると経営者自ら首を絞めることになるのでご注意ください。
対処法:弁護士だけでなく、税理士にも確認してもらうことで、税金の滞納を防げます。源泉所得税や消費税は優先して確認しましょう。
⑦:経営者保証ガイドラインを使用せず個人破産した
経営者保証ガイドラインを利用すれば、自己破産せず法人破産できます。利用条件を満たしている場合は、ぜひガイドラインをご活用ください。は産後新しい会社を設立する場合も、自己破産するより有利になります。
対処法:法人破産を相談する際、経営者保守ガイドラインについても弁護士にご確認ください。
⑧:第二会社方式の設計を雑に作成する
破産する会社の事業・取引先・従業員をそのまま移そうとすると、新しい会社が作れなくなることがあります。
対処法:第二会社方式は慎重に設計しなければいけません。弁護士や中小企業診断士に相談して再生計画を立てるのがおすすめです。
⑨: 自然消滅・休眠会社化で済まそうとした
資金繰りが厳しいから、と破産せずに放置すると、後から税務調査が入ったり債権者に訴訟されることがあります。そのままにしておくと被害が拡大するので、しっかり破産するのが安全です。
対処法:会社を残しておくと税申告義務・債権者の追求リスクが続きます。金銭的余裕がない場合も弁護士に相談し、正式に会社をたたんでください。
⑩:経営者のメンタルケア
前向きな破産であっても、その心労は計り知れません。取引先への配慮はもちろん、金銭的心配。さらには家庭への影響もあり、メンタルを壊す方もいらっしゃいます。会社をたたむことは何も恥ずかしいことではありません。ぜひ、頼れる方には頼り、場合いんよっては病院の診察も視野に入れてください。
特にご注意いただきたいのは手続が落ち着いたころ。一心不乱に進んでいる時は良いですが、立ち止まった時、人は疲れに気がつきます。辛い時は辛いと言える、そんな環境作りを意識的に行うことも法人破産の重要な工程です。
法人破産や破産手続きについて詳しく知りたい方へ
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